「魚ちゃんは、誰と交換日記したい？」
そう、聞いてきたのは、みかんだった。
クラスでは、女子たちの交換日記が流行っていた。
私は、ほとんど小学校に行くことができなかったから
なかなか友達もグループにも入ることができず
ひとりで絵を描いてるような子だった。
みかんは、クラスの中心にいるような女の子で
いつも、女子に囲まれて笑顔だった。
交換日記・・・誰と・・・
私は、なんとなく・・・みかんのグループにいる
ふわふわの茶色い髪色のみーちゃんの名前を言った・・・
次の日、みーちゃんから交換日記をしようと言われた。
みかんに頼まれたんだなって、すぐにわかった。
みかんは、何かと私に話しかけてきた。
私に話しかけなくても、みかんには話す人がいっぱいいるじゃん。
そう、思っていた。
ある日、みかんから引っ越す話をされた。
引っ越すから、お別れ会の司会を私にしてほしいと頼まれた。
なんで、私？
みかんには、たくさん友達いるじゃん。
そう思って断ったけど
みかんは、ぜひ、魚ちゃんにやってほしいと言われて
渋々、引き受けた・・・
帰り道、みかんと一緒に帰る時があって
「私ね、転校生だったから
最初ね、全然、友達できなくて、ひとりだったんだ。
魚ちゃん見てたら、その時の自分みたいだなって思って・・・」
みかんが昔の話をしてくれた。
そういえば・・・いつから、みかんがこの学校にいたのか
私には、まったく覚えがなかった。
みかんのお別れ会の日、みかんと一緒に司会をして
先生が、たくさんの写真を撮ってくれた。
クラスで集合写真を撮る時も
みかんは、私の隣で
笑顔で私にぴたっとくっついて
私は緊張して硬直した姿が写真に残った。
みかんがいなくなってから
私は、ひとりに戻った。
クラスの女子は、私のことをよく思ってなかったから
私の悪口を聞こえるように吐き捨てた。
みかんがいたから、言わなかったけどさ。
もともと、なんで、魚ちゃんがみかんの司会やったの？
納得できないよね！！
みかん、優しいから同情して話しかけてたのに勘違いしちゃってさ！
勘違いなんてしてないよ・・・
同情だってわかってたよ・・・
私だって、みかんから頼まれたから交換日記してたけど
本当は、すごいイヤだったよー！
それも、わかってるよ・・・
みかんが頼んでくれたってことも・・・
中学には、そのまま小学校の子たちと他校の小学校の子たちが
入学する。
中学に入学しても、私は、私をよく思っていない女子から
悪口や陰湿ないぢめにあっていた。
そんな地獄のような日々を過ごした。
高校の帰り、地元の駅に着くと
雨が降っていた。
私は、傘をさそうと人混みから少し離れて歩き出すと
「魚ちゃん・・・？」
誰だろうと振り返ると
そこには、傘をさしたみかんが立っていた・・・
「みかん・・・？」
「あ！！やっぱり、魚ちゃんだ！！」
と、ぱぁっと笑顔になって変わらないみかん。
お互い傘をさして歩きながら話をした。
引っ越してからも、私のことを心配でいたこと。
いろいろ話したような気がする。
私は、なにひとつ過去にあったイヤなことは
話さなかった。
ただ、ただ、胸がいっぱいだった。
そして・・・
私は、思い出した。
あの日、あの時・・・
本当に、交換日記をしたかったのは
みかんだったことに。
