あの空は夏の中

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天は二物を与える

小学校の頃
クラスメートの聡ちゃんは、休み時間になると
クラスの女子から、せがまれてイラストを描いていた。
それまで、私は聡ちゃんの強い印象はなかった。

 

聡ちゃんは、ブランコ事故で入院中に
ずっと、マンガを読んでイラストを描いてたらしい。
それで、絵がうまくなったと聞こえてきた。

 

写生大会の日、私は、ひとりでどの背景を描こうかと
ブラブラ歩いて、決めた場所に大きなレジャーシートをしいて
画材を準備していると
先生から

 

「魚ちゃん、大きなレジャーシートだね!
聡ちゃんも一緒に入れてくれない?」

 

と、声をかけられた。

 

いつも、クラスの女子に囲まれる聡ちゃんが、ひとり?
と、疑問に思ったけど一緒に描くことにした。

 

聡ちゃんは、どこの風景を描くの?と聞いてきて
私は、あの建物と指さすと、聡ちゃんは私もその建物を
描くと言った。

 

しばらく絵に没頭して下描きを、えんぴつで描いていた。
自分では、かなり頑張って描いたなという感じだった。

 

フッと、隣の聡ちゃんの下描きを見ると
めちゃくちゃうまい・・・
まるで写真のような細かな絵だった・・・

 

私は、その時、すごく自分の絵がはずかしくなった・・・

 

ああ・・・
だからか・・・
みんなが、聡ちゃんと一緒に絵を描かなかったのは・・・
誰だって、みじめな思いなんてしたくないよね。

 

私は、もう消えたい思いで
絵の具を適当に、ザッと塗りだした・・・
早く、その場から離れたかった・・・
聡ちゃんは、私の絵を見て

 

「せっかく、綺麗に下描きを描いたのに・・・
もったいない・・・」

 

と、言った。
私は、それを無視して早く終わらせた。

 

その年、聡ちゃんは写生大会で金賞をとった。
その次の年も、聡ちゃんが金賞をとった。

 

クラスが別になっても、写生大会のたびに
聡ちゃんの存在を、私は無視できないでいた。

 

いつものように、写生大会の時期がやってきた。
私は、仲の良かった友達と、ふたりで
私は、あの風景を描くと言うと
友達は、じゃあ、私はあっちの風景を描くねと言って
描き始めた。

 

私は、とても自由なキモチで描いていた。
その友達のことも、すごく好きだったし楽しかった。

 

たまに担任の先生が、様子を見に来て
ここは、もっと、こうした方がいいとアドバイス
みんなにしていた。

 

楽しく絵の具をのせて完成させた。

 

その絵が、その年、金賞をとった・・・
私は、それまで賞をとったことがなかったから
最初、どうしても信じられなかった。

 

学校で金賞をとって
その後、私の絵は県大会?に入選して
展示されることになった。
よく、わからなかったけど、クラスの女子が
すごーい!!と言う言葉で
すごいのかと、うれしくなった。

 

学校で展示された賞の数々の中に
私の金賞の絵の隣に、銀賞の聡ちゃんの絵が並んだ。
やっぱり、聡ちゃんの写真のような精密な絵は昔よりも
上達していて、うまかった。

 

やっと・・・聡ちゃんと並べた気がした。

 

このまま、中学に入っても聡ちゃんと競い合いたいと
私は、思ってた。
ずっと、意識しながら絵を描くんだと思ってた。

 

中学入学で、私は迷わず美術部に入った。
美術部に聡ちゃんの姿はなかった。

 

聡ちゃんが入ったのは、陸上部だった。

 

私は、なんで?
あんなに絵が描ける人が絵を選ばないの?
中学で、聡ちゃんの絵を見ることはなかった。

 

どうして?
絵を描くのやめちゃったの?
そんな、簡単にやめられちゃうものなの?
私より、全然、才能があるのに?

 

体育祭の日
私の目の前を、リレー選手になった聡ちゃんが
ものすごい速さで走り去った。

 

ああ・・・
聡ちゃんが、本当にやりたかったのは
本当に望んだのは、これだったんだね・・・

 

天は二物を与えないなんて嘘だ。
天は二物を与える・・・

 

そう感じた中学の秋だった。