あの空は夏の中

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悪友と呼び合う関係

色黒で目が大きく整った顔立ちは
アジア系美人。
それが彼女の第一印象だった。

 

グループから外れて、私のグループに入ってきた彼女。
鈴さん。
なんだかわからない違和感を彼女に抱いていた。

 

ソフトボール部を辞めて、美術部に入部した鈴さんは
美術部の先輩たちに
私が小学校の頃、自殺しようとした話を広めて
先輩たちは、私と話をしなくなった。

 

もともと私をよく思ってなかった部活の同級生も
鈴さんと一緒に、私の悪口を広めて
部活では、ひとりになった。

 

鈴さんと何度か一緒に帰ったことがあった。
鈴さんは駄菓子屋で買い食いをするし
学校の隣にできた店で、隠れて一緒に食事したりした。
授業中、イヤホンを隠しながら音楽を聴いてるとか。
でも、成績はよかった。

 

突然、グループの仲間から無視されるようになり
そのまま、中学2年になった。

 

きっかけは覚えてないけど
たまたま仲良くなった菅ちゃんと猫ちゃんが
美術部に入部して、私はひとりではなくなった。

 

その頃、同じクラスになった幸さんが
グループの子たちがお弁当を食べてる場所を教えてくれて
私は、無視された理由が知りたくて会いに行った。
理由を聞くと、私が描いてたマンガが盗作だと
鈴さんから聞いたと言われた。
私は、グループの子たちと話し合って誤解は解けた。

 

鈴さんはクラスも別になりグループからも外れて
新しいグループに入っていた。

 

部活に行くと、鈴さんが菅ちゃんたちと仲良くなりたいから
紹介してくれと頼まれた。
私は、猫ちゃんに相談すると
猫ちゃんは悪いけど仲良くするつもりはないと言った。
菅ちゃんは猫ちゃんの親友だったから同意見だった。

 

鈴さんに私は嫌われている。
それだけは、わかってた。

 

それでも、たまに鈴さんと一緒に帰っていた。
鈴さんが、新しいグループの子たちから
ひどい手紙をもらったと私に見せた。
それから、ポケットから聖書を取り出した。

 

私が、死んだら両親に十字架のお墓に入れてほしいと
頼んでほしい。

と、言われた。

 

私が、グループにもどったことを知ると
あんな子たち、どうでもよかったよ。
ただ、ひとりになりたくなくて利用しただけ。
他のグループに入るまでのつなぎだよ。

 

私にとっては、中学に入って初めての友達で
大事な友達だった。
代わりなんていない特別な友達。

 

夕方、電話が鳴って
鈴さんが、今日、泊まりに来てほしいと言った。
鈴さんちは、うちの近所にあった。
夜、ひとりになりたくないと言ってた。
誰もいないようだった。
ママに話すと、私は、鈴さんちに泊まりに行った。

 

鈴さんは、きちんと料理ができる子で
夜ごはんに、ハンバーグを作ってくれた。
深夜までテレビを見て、朝になって帰った。

 

別の日は、映画に誘われ
鈴さんちに行くと、鈴さんは掃除をしていた。
玄関で待っていると
鈴さんのパパが、掃除はしたのか!!と怒鳴り
掃除しましたー!と、鈴さんが言うと
まだ、汚れてるじゃないか!!と怒鳴って
なかなか出かけることができなかった。

 

鈴さんちは、お兄ちゃんと弟がいて
鈴さんのママは、お兄ちゃんと弟ばかり可愛がると言ってた。
すごく勉強が好きなママで、結婚して子供を生んだあとに
大学に通ったほどだったらしい。
そして、どんなに成績が良くても認めてもらえないと話していた。

 

私は、グループや部活で居場所をなくされて
ひとりになったけど、鈴さんを憎めないでいた。

 

お正月、鈴さんがうちに家出をして来た。
パパに、階段から突き飛ばされた・・・
と、泣きながら言っていた・・・
ママは、子供部屋に私と鈴さんだけにして
おせち料理を運んだ。

 

鈴さんは、ぽつりと

魚さんちは、いいね・・・

と、言った。

 

私、魚さんが妬ましかった。
家族に恵まれてて
だから、全部、奪ってやろうと思った。
友達も部活も全部・・・

 

私が、無意識に見えないように見えないように
家族のいいところばかりを話していたから
本当の姿を知らないのは、あたりまえのことだった・・・

 

うちだって、パパは、いつもママに暴力をふるって怒鳴って
家具も食事も、すべて投げて壊して・・・
ママだって、家にいたくないって幼い弟を私に押しつけて
まったく、恵まれた家ではないよ。

 

でも、そんなことを言える勇気が私にはなかった・・・
私も同じだよって言えなかった・・・

 

夜になると、鈴さんの弟が迎えに来て
鈴さんは帰って行った。

 

あの時、本当のことを話していたら
私たちの関係は、変わっていたんだろうか?

 

中学を卒業して、別々の高校に入ってからも
しばらく会っていたけど
お互い疎遠になった。

 

結局、最後まで本当のことを言えずに
私たちは、会わなくなった。