あの空は夏の中

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出せない手紙

塩さんが、部活に来なくなって
部活の仲間は、みんな心配した。

 

長い風邪かな?そう思っていた。
顧問の先生から、塩さんが退部したことを知らされた。

 

仲間は、誰も理由を聞かされなかったし
私も、知らなかった・・・
きちんと、理由が知りたいと思ってた。

 

ある日
塩さんから放課後、みんなで教室に来てほしいと言われた。

 

「両親が離婚したんだ・・・
それで、部活辞めて・・・バイトしようと思って・・・」

 

塩さんの家族の話は、よく聞いていた。
塩さんのお母さんは、20で塩さんを生んで
お前を生んだから自由がないって言われてたこと。
よく両親がケンカばかりしていたこと。

 

「最近ね、両親がいろんなところに連れて行ってくれて・・・
仲良くしてたから・・・
・・・まさか、離婚なんて思ってなかったから・・・」

 

うん・・・
多分、両親は最後の思い出作りをしてくれたんじゃないかって・・・

 

「それでね・・・
家族がいた頃と同じ環境にいたくなくて・・・
思い出しちゃうから・・・
環境変えようと思って・・・
だから、みんなとは、もう一緒にはいられない・・・
ごめんなさい・・・」

 

と、泣きながら、塩さんは言った・・・

 

一緒にいられない・・・
一緒にいられない・・・
一緒にいられない・・・

 

家に帰って、私は、塩さんに手紙を書いた。

 

一緒にいたいよ。
そばにいたいよ。
友達が困ってる時こそ、そばにいたいよ。
友達が困ってる時に、そばにいられない友達って何?

 

泣きながら、そんなことを書いた。

 

塩さんのことが好きだったから
たくさん、からかったんだよ。
ずっと、一緒にいられるって思ってた。
こんなカタチで離れたくないよ。

 

もう、どんな言葉だったら届くのか伝わるのか
わからなかったけど、思ってることを全部、書いた。

 

塩さんに手紙を渡して返事の手紙をもらった。
塩さんの手紙には

 

そばにいたら、ぎゅって抱きしめたいくらい
うれしかったよ。
ありがとう。
大好きだよ。

 

次の年、私は、塩さんと同じクラスになった。
塩さんは、別のグループで笑っていた。
もう、私は、そばで塩さんの笑顔を見ることはなかった。
遠くから見る塩さんの笑顔が痛かった・・・

 

つらかった・・・
私がいたら、思い出してしまうから
そばにいては、いけない・・・

 

大好きなまま離れなきゃならないなら
いっそ見えない方がよかった。

 

それから何年しても、私は塩さん宛に
手紙を書いては出せないでいた。
手紙は、たくさん書いては溜まっていった・・・
何度も書いては、読み返し、出せない。
何度も書いては、読み返し、出せない。

 

いっそ、キライって言われたら、よかった。
いっそ、キライになれたら、よかった。

 

でも
ようやく、私は、塩さんにとって
自分は、必要なかったんだと・・・

 

出せなかった手紙を
塩さんからもらった手紙も
ゴミ箱に捨てた。