あの空は夏の中

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帰りたい何処か

私が生まれ育った町。
たった3年しか住んでいなかったけど
いつも、思い出すのは・・・あの町の風景。

 

1階しかない一軒家。
庭には、白い箱ブランコが置かれて
私は、そこでよく遊んだ。
自慢の箱ブランコだった。

 

ママは、薔薇や花が大好きで、玄関には薔薇のアーチ。
庭にも、たくさんの花々が咲いていた。

 

近所には、似たような作りの一軒家が、たくさん建っていた。
みんな仲良く住んでいた。
似たような年頃の子供も多かったから特に

親同士も仲が良かったのかも。

 

少し歩くと、大きな公園があって
大きな滑り台と、ジャングルジム、ブランコ・・・
使われなくなった電車が置かれていた。
公園の近くには、駄菓子屋があった。

 

家の裏は、広い田んぼが広がっていた。
夜、家族が寝静まっている中
私は、ひとりで外を見つめてた。

 

遠くに見える道路から、車の赤いランプが並んで光ってる。
まだ、幼稚園にあがる前の子供だったけど

 

「遠くに行きたい・・・」

 

と、強く思ったのを覚えてる。

 

世界は、私が知らないだけで
きっと、すごく広いんだと思った。

 

その頃から、私は何の成長もしてなくて
そのまま大きくなった。

 

幼なじみの男の子と遊んだり
近所に、かなり年上のお兄さんとお姉さんが住んでる家があった。
ふたりは高校生くらいだったのかな?
そこに遊びに行くと、喜んで遊んでくれた。

 

老人夫婦が住んでる家もあった。
たまに、顔をのぞかせると喜んでくれた。

 

私は、かなりのおてんばだった。
よく、ママから公園までしか行っちゃいけないと言われてたけど
公園の先が、いつも気になって
冒険だ!!

 

と、歩きはじめて、どこをどう歩いたのか?
知らない家の庭の砂場で遊んでる男の子と仲良くなり
一緒に遊んでいると、その子のママが

 

「あら?どこの子?」

 

と、聞かれて、男の子は知らない~と答えて
私も、あっちから来た!しか言わないから
そのママさんは、私たちにアイスをくれて
すぐ、警察に電話をしたみたいだった。

 

しばらくすると、パトカーが来て
ママが出てきて、めちゃくちゃ怒られた。

 

「迷子」

 

と、言われたけど
私は、迷子になったつもりはなかったし
ただ、冒険してただけなのにって思った。

 

私の冒険は、毎回、「迷子」扱いされ
何度か、パトカーのお世話になったんだけど。

 

公園とは逆方向へも、冒険をした。
知らない子と友達になっては遊んで
毎日が、冒険や発見の連続だった。

 

寒い冬の夜、ママが弟をおぶって私の手をひき
自販機でミルクセーキを買ってくれた。

 

あの町から、離れて
改めて、あの町が、一番好きだったと思う。

 

ママは、明るい性格で、どこへ行っても
人に囲まれ、誰とでも仲良くなる性格だった。

 

でも、ママにとっても、あの町が一番好きだったと思う。
ママが、一軒家にこだわったのは
あの家の風景を忘れていなかったからだと思う。
近所の優しい人たち。

 

あの町は、すべてが温かかった。

 

引っ越してから、ママはたくさんの知り合いや友達がいたし

私が会ったことのない話に出てくる知らない人たちの存在。

 

ママの葬儀に
駆けつけたのは、あの町で仲良くなった近所のおばさんたちと
ママの昔からの友達だけだった。

 

3歳までの私しか知らないおばさんたちは
泣きながら

 

「魚ちゃん、変わってないね・・・大丈夫?」

 

と、声をかけた。
すぐに、私だとわかってくれた。

 

あの町は、もう私が覚えている町の姿ではないことを
ママが生きてる時に話してくれた。

 

家もすべてなくなり、田んぼもなくなり
学校が建ってるらしかった。
公園も、もうないと言ってた。

 

私が、ココロに、ずっとあった

 

「帰りたい何処か」

 

は、もう、どこにもない・・・
それでも・・・
あの懐かしく泣きたくなるような
温かな町の風景は、忘れることはない。