高校に入学したばかりの頃。
クラスの女子と部活見学をした。
「物理部」の見学に行った時
学ランの上着を羽織ったショートヘアの似合う色黒の先輩が
「わぁ！！君、かわいいね！！僕の彼女にならないかい？」
と、ハグされて
え？え？え？
と、硬直してるとニコニコと笑顔の眩しい女性だった。
クラスの女子は、イケメンの先輩が多いから
仮入部しようかとワイワイ話していて
私は、入りたい部活が決まっていたけど
仮入部ならと一緒に入部した。
そして、本命の「マン研部」の見学に
ひとりで行くと、あの先輩がいた。
先輩は、私に気がついて笑顔で
「魚ちゃんーーー！！」
と、呼んだ。
物理部の部員だと思っていた先輩は
マン研部員の３年生だと知った。
「若先輩」
物理部には、彼氏さんがいたから遊びに来てただけだったらしい。
その彼氏さんは、クラスの女子がイケメンって言ってた
先輩のひとりだった。
物理部で、望遠鏡を運んで屋上で星を見る日があって
誘われて屋上に行くと、若先輩もいた。
いつも、ニコニコと笑顔だった若先輩は
みんなから離れて寂しそうにしてた・・・
どうしたんだろう・・・
若先輩の彼氏さんは、他の先輩たちとワイワイしてたり
後輩の女子に囲まれていた。
たまに、若先輩の様子を彼氏さんが見に来てたけど
若先輩は
「帰りたい・・・」
と、言ってたけど
彼氏さんは、全然、帰る素振りがなくて
若先輩は
「ひとりで帰る！！」
と、帰ってしまった・・・
それから、いろんな場所で若先輩を見かけるたびに
隣の彼氏が、毎回、違っていた。
クラスの女子は、若先輩のことがキライだった。
男好きだとか、毎回彼氏が違うとか
自分が好きになった先輩も狙われてるとか
私は、どうしても若先輩をキライになれなかった。
むしろ、憧れの先輩だった。
きっと、若先輩の寂しさをうめられる人が
いなかっただけなんだ・・・
３年生が卒業するまで数ヶ月のある日
職員室に入ると、先生たちが若先輩の噂話をしていた・・・
若先輩が、退学した話だった・・・
え・・・なんで？
あと数ヶ月で卒業なのに、なんで退学・・・？
噂では、若先輩とつき合ったことないイケメンはいないとか
先生とも、つき合ってたとか・・・
理由は、わからない・・・
ただ、若先輩がいなくなってからも
たまに、若先輩の噂が流れた・・・
若先輩が、結婚したという噂を聞いた時は
それが、ほんとならいいなと思った。
もう、若先輩が、寂しい顔にならなかったらいいなと思った。
学校の帰り
いつもの駅の改札を通ろうとした時
人混みの中、多分、同時に振り向いた。
「魚ちゃん！！」
若先輩だ！！
若先輩は、変わらず笑顔で手をふった。
若先輩・・・
先輩は、まるで風のような人でした。
ずっと、憧れの先輩です。
