あの空は夏の中

ドラマ、映画、本、特撮の感想ブログ

ふがいない僕は空を見た

私は、近所の本屋に、夜な夜な

新作本のチェックをするのが日課だった。

 

新作コーナーで、気になる本を

手に取り、あらすじと最初の文を少し読んで

買うかどうか決める。

 

そして、その日も、なんとなしに

ふがいない僕は空を見た」を手に取り

購入した。

 

最初の話は、高校生の拓巳が年上の主婦あんずとの

えっちなシーンから始まるけど

なんとなく、私は、官能小説とか、エロメインの話とは

まったく違うものを感じていた。

 

拓巳と、あんずは、必ずアニメキャラのコスプレをして

行為をする。

 

その、あんずって呼ばれている主婦は里美という

本を読む限り、取り柄もなく、仕事もできない女性。

そんな里美が、自分を好きになってくれた慶一郎と

結婚を選ぶのは、とても簡単に想像ができた。

ただ、慶一郎とは結婚5年になっても子供ができず

慶一郎の母からは、執拗なまでの孫を希望され

不妊治療に通わされる・・・

そして、慶一郎はマザコンっていう・・・

 

里美にとっての、コスプレは変身願望だと思った。

現実逃避としてのコスプレ。

 

里美の浮気を疑った慶一郎が、隠しカメラを設置し

不倫がバレてしまうんだけど・・・

 

里美が、離婚してほしいと頼んでも

聞き入れてもらえず・・・

結局、アメリカに行って体外受精させられるみたいだった・・・

 

そして、ネットでは、コスプレで行為をしている

拓巳と里美の動画や画像が拡散され

拓巳は、不登校になる。

 

拓巳が、不登校になり心配する同級生・福田。

福田は、団地住みで認知症の祖母と二人暮らしで

生活のために、バイトで忙しく過ごしている。

そして、福田と同じく、団地住みの同級生・純子。

 

私が、一番、この作品で、共感したのは

福田の話だ。

 

もしかしたら、拓巳と里美だけの話だったら

こんなに、強い印象はなかったかもしれない。

 

福田の話に、とても共感したのは

私も、団地で育った子供で

福田は、認知症の祖母を抱えているように

私も、赤ちゃんの弟を抱えていたからだ。

 

福田も、私も、親は、何やってんの?

な、状態だし

めちゃくちゃ極貧なところも一緒だった。

 

福田は、バイト先の先輩・田岡から

今の生活から抜け出すために、勉強を教わる。

田岡には、悪い噂があり

予備校で働いている時に、男子児童の裸の写真を

集めていたとか

高級マンションで同性のパートナーを探してるとか。

福田は、噂は知っていたけど、田岡を信じ勉強する。

逆に、純子は、田岡を胡散臭いと思い

人生を諦めていた。

 

私が、本を読んで思ったのは

田岡が、同性が好きだとしても

福田のことは、不純なキモチはなく

本当に、人生を変えるために

勉強を教えていたと思う。

 

福田の祖母の症状が悪化し

田岡が、紹介してくれた病院に入院してから

一週間後、田岡は、強制わいせつの容疑で

逮捕される。

 

田岡は、とても裕福な家で育った人だったけど

田岡にも、田岡の抱える闇があったのかも・・・

 

でも、福田は、死ぬほど勉強して大学に入り

この町から出ていくことを決意する。

 

福田みたいに、極貧の子供なんて

いまどき、いないって思う人がいるらしいけど

育児放棄してる親なんて、山ほどいるだろうし

学校にだって行かせてもらえない子なんて

いっぱい、いると思うよ。

 

福田が、死ぬほど勉強する未来は

簡単な道ではない。

頼れる親や大人がいないんだから・・・

その中で、唯一、田岡って存在が

かなり、大きかったと思うんだよね。

 

変えられない状況から人生を諦めてる純子は

不登校の卓巳のエロ画像のコピーを

学校にばら撒く・・・

それを、知った福田は、自分と同じ状況の純子を

責めることができない。

 

きっと、純子は、救ってくれる、守ってくれる

助けてくれる親や大人が、まったくいなくて

感情が歪んでしまったんだろうな・・・

 

不登校から、学校へ行くことを決めた卓巳と

福田、そして、純子の未来が

明るいものになってほしいと

願ってしまう作品だった・・・

 

ふがいない僕は空を見た」で

作家・窪美澄の名前を、初めて知った。

 

もともと、女流作家が好きな私は

窪美澄の他の本も、読んでみたいと思った。

 

多分、窪美澄の書く作品は

私の好きな話だろうと直感したから。

ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)

ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)